ポリペールとプラスチック如雨露と山椒の鉢植えに囲まれるようにして「登録有形文化財」下の行には「この建築物は国民的財産です」…という文化庁のプレートが見える。東京大空襲の時も奇跡的に戦災を逃れたという建物は殆ど昭和6年に建築されたままだそうです。
藍の暖簾をくぐると昭和のよき時代に足を踏み入れたような懐かしさを感じる。歴史を刻んだ柱の時計も半世紀も使われてきた「せいろ」も平らでないアルミのトレーも何もかもが蕎麦の作り方と同じように大切に受け継がれている。

アイドルタイムだったので客は私たちの他には誰も居ない。
店の人は、一見ぶっきらぼうだが新聞を差し出してくれたり親切。一番人気のカレー南蛮と天もりを注文すると暖簾の向こう側でふわっと湯気が立ちこめ、天ぷらの油がはじける音がかすかに聞こえる。
先に天もりのトレーが運ばれた。そのトレーに昔給食で食べたコッペパンやミルクの記憶が蘇る。この店は何もかもが懐かしい。
わたしの好きな茄子にサツマイモ、ピーマンにエビの天ぷら。細めの蕎麦。それからカレー南蛮は豚肉と葱が入り麺にカレーが良い加減にからまっている。好きだなぁ、この味。
これから先、美味しいものを食べる機会はまだあるだろうけど、懐かしい味にはそうは出会えないであろう…と思う。

天もり 730
天ざる 780
けんちんそば 650
みそ煮うどん 700
カレー南ばん 680
天ぷらそば730
カレー丼 630
天丼 880
