この建物は「放浪記」「浮雲」などの代表作で知られる作家・林芙美子が、昭和16年8月から昭和26年6月28日に
その生涯を閉じるまで住んでいた家です。
大正11年に上京して以来、多くの苦労をしてきた芙美子は、昭和5年に落合の地に移り住み、昭和14年12月には
この土地を購入し、新居を建設しはじめました。
新居建設当時、建坪の制限があったため、芙美子名義の生活棟と、画家であった夫・緑敏名義のアトリエ棟を
それぞれ建て、その後すぐにつなぎ合わせました。
芙美子は新居の建設のため、建築について勉強をし、設計者や大工を連れて京都の民家を見学に行ったり、
材木を見に行くなど、その思い入れは格別でした。そのため、山口文象設計によるこの家は、数寄屋造りの
こまやかさが感じられる京風の特色と、芙美子らしい民家風のおおらかさをあわせもち、落ち着きのある
住まいになっています。芙美子は客間よりも茶の間や風呂や厠や台所に十二分に金をかけるように考え、
そのこだわりはこの家のあちこちに見ることができます。(記念館のご案内より)