ぽつんぽつんと洗いざらしのコットンシャツに小さな水玉模様が落ちる。
ペダルをこぎながら空を見上げる。
青い背景の上に白いペイントブラシで横殴りに筆を這わせたような雲が
幾筋か所在なげに浮かび上がっている。
「日和り雨…」
今日は梅雨の中休みらしい。
「晴れ間がのぞきますのでお洗濯は今日のうちに…」お天気姉さんの笑顔を思い出す。
夫婦が年に1度だけ会える日、七夕だから梅雨前線も遠慮したらしい。
ふと田舎の夜空が記憶の隙間から蘇る。
漆黒の闇のなか、潮のかおりがする。時折かすかな草の匂いを風が運ぶ。
手を伸ばせば届きそうなところに星が瞬く。
ワタシは夏の星座表をぼんやりと思い浮かべる。
勇者オリオンを刺し殺したさそり座を目印に。
まるい月が空にぼんやりと浮かぶ夜に。