新緑の山道を走っても走っても目的地になかなか辿り着けない。
途中、小さな看板はあるものの心もとない気持ちに支配されながらも引き返そうとは微塵も思わない。
以前、ふらっと立ち寄った道の駅でたまたま手にした座禅石のポストカードにあった店内が素敵すぎて。
月のうち半分しかオープンしていない営業日に合わせて、きらきらと眩しい陽射しの中ひたすら車を走らせる。
やっと着いた駐車場から入口を探して150mほど歩く。
あたりを見まわしても尋ねる人が通る筈もないような山中の小道だ。
思ったよりすぐに入口は見つかったが、広い敷地内のため人の気配もしない。
カフェへ続くと思しき小径を歩くと自分がまるで自然の中に生息する昆虫か何かのように感じる。
カブトムシが甘い餌につられるかのように踏み固めただけの階段や苔むした踏み石を進んでゆく。
まるで絵本の中に出てくる森の世界のようだ。
花屋さんのウインドウに並んでいるような華美ではないけれど楚々として空に向かって立つ野の花の愛らしいこと。
途中、天敵の蛇に合うのではないかと恐る恐る探るような足取りで歩く。
心細く小さな私を後押ししてくれるのは優しい木漏れ日と枝葉を揺らす風の音。
緑に埋もれたかのような広い敷地内にはカフェ、ギャラリー、宿泊施設等があるが小径は自然とカフェへと誘ってくれる。
樹々の色を映しだす全面ガラス張りのカフェ棟に足を踏み入れると薪ストーブの中でオレンジ色の炎がちらちらと揺らめいている。
マダムは、忙しそうだけど丁寧に私たちを迎えてくれた。
手書きのメニューを手渡され小腹がすいていたのを思い出す。
注文したのは
カマンベールトースト
tea sat(三年番茶、スノーボール)
カレー&ブレッド
三年番茶
テラス席で小鳥のさえずりを聞き、木漏れ日を受け、柔らかな風を感じながらいただくことにしよう。
リラックスチェアで目を閉じると別世界。
明日からまた頑張れそうな気がするなぁと伸びを一つ。
マダムが運んでくれたプレートには近くで焼かれた自家製窯焼きパンが香ばしく盛られていて、それは旨味が凝縮したカレーやカマンベールチーズによく合った。
初めていただく三年番茶の素朴な味わいは、体の中の何か悪いものを帳消しにしてくれるような安心感がある。
ランチに満足してギャラリーに向かうと宿泊施設の前で犬のジャックが迎えてくれた。
人懐こくて初対面なのにお腹を見せて歓待してくれた。
ギャラリーでは夏用の肌さわりの良いコットンパンツを購入した。
カフェに来ただけなのに小旅行をしたような満ち足りた気持ちで帰途についた。
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