日曜日の昼前、ローカル局のイベント紹介で映し出された紫陽花に目を止める。
アナベル・ダンスパーティー、墨田の花火など馴染みのあるものや、伊豆の花、舞妓、花まつり、ごきげんよう等の聞き慣れない品種の株が薄紅色やら青や白の波を広げている。
「いいなぁ」と口の中で呟く。
仕事に追われている相方が「あと1時間位したら少しなら出られそうだよ」と眼鏡にスクリーンを反射させながら言う。
この満開の紫陽花の小径を花に埋もれて歩きたい気持ちと、疲れている相方を思いやる気持ちが少しの沈黙を作る。
相反する気持ちを天秤にかけて
「じゃチケットWebで買っといても良い?!」
やっぱりそっちか >自分
小学生の時に見た夢の世界だ!
昆虫や花の輪郭が鮮やかなテーブルランプが並んだホールに足を踏み入れた瞬間、そう思った。
それほど鮮彩な夢を見たのは人生で一度だけだ。
小学生のわたしは漆黒の闇の中、薄手のワンピースで江ノ口川の堤防にたっていた。
見下ろすと川下の方に異形のものたちが仰向けに浮かんで流れてくる。
朽ちた体は色とりどりで半透明のガラスのステンドグラスのようだ。
川面に鱗粉がキラキラと舞い立つ美しさはこの世のものとは思えない・・というかこの世のものではないのだ。
なのに、禍々しさは全くなくその美しさにただ敬畏していた。
あれは一体何だったんだろう。
三途の川にしても、花は咲いてないし川向こうに死んだ肉親も居なかった。
物恐ろしさも忘れるような色彩の記憶が時空を超えて蘇ってきた。
蜻蛉、蜘蛛、葡萄、薔薇、百合、蓮等をモチーフにしたランプを前にして一瞬、堤防に立ったような錯覚を感じた。
「どれか一つだったら、どれが欲しい?」
背後の夫の声に現実に戻る。