帰ってきたベル

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また会えたね、ベル!

多分、中学生の頃だったよね、ベル。おまえが家にやってきたのは。
茶色い毛むくじゃらの小さな固まりは、その日から私の友達になった。
堤防を散歩したり、一緒に寝たり。家にいる間中、私の側にはベルがいた。

友達と遊んでいてベルが邪魔な時は、怖い顔をして「あっち」と言う。
すると、尻尾を丸めてすごすごと歩くのだが、いくつか歩いてぺたんと座り両手を顎の下にして大人しくしていた。
くりくりした目を三角にして、ちょっと悲しそうだったベル。

いつか時は過ぎて私は家をでていた。
たまに帰ると尻尾をちぎれるくらいに振って喜んでくれた。
わたしはその茶色い頭を撫でる。
嬉しそうな顔をして手を舐めてくれる。

それから数年経って、ベルは病気になった。
家に帰る度に容態は悪くなっていった。
そして歩く事ができなくなり、毛布の上で丸くなったままになった。

ある日、「ベルがもう駄目かもしれない」と電話があり、会いに急いだ。
もう目を開ける元気もなくなったって。
(駄目って?駄目って?ベルが駄目って?)

私がベルのそばに行くと、動けないという上体を起こし、開かないという目をあけて
「くぅーん」と一言ないた。
そしてそのまま虹の橋のたもとに旅だった。

ばかばかばか、ベルのばか。
ベルと散歩した堤防に駆けだした。いつもと同じ風景。ベルが居ないというのにいつもと同じ。
うずくまって声をあげずにないたっけ。

3DSの画面でベルと名付けた子を見ているうちに、思い出してひとりで泣けた。